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「読書」世界地図の楽しい読み方

 地理の雑学本。「権田地理B」と似た内容がいくつかあった。地理雑学には定番があるのだなと思った。ただ、チェコ・スロバキアが分かれた理由について、こちらと権田地理がそれぞれ違うことを言っていて、気になった。

 世界地図の楽しい読み方のほうは、「民族的な違いによる離婚だ」と言っているが、権田地理のほうは、「民族的には共通点が多いものの、工業化による経済格差によって分裂した」と言っている。

 ほんの数年前まで地図上では一つだった国が、突然、国境線が引かれ二つの国になってしまったと聞けば、誰だって驚く。たとえば、日本がある日突然、箱根の山を境にして、東と西、まったく別々の国になってしまったと思えばいい。
 しかし、そんなことが現実に起こったのは「チェコスロバキア」で、「チェコ」と「スロバキア」の二つの国にきれいさっぱり分かれてしまったのだ。
 チェコスロバキアといえば、地図上ではドイツ、ポーランド、旧ソ連ハンガリー、オーストリアなどの多くの国々と国境を接する、東西に細長い国だったが、もともと一つの国としてまとまっていくには無理があったようだ。
 この国の九五パーセントを占めるチェコ民族とスロバキア民族は、もともとあまりしっくりいかなかった。夫婦の関係でいえば、自己中心的でいばりたがる夫(チェコ)に対し、なにも逆らえない、おとなしい妻(スロバキア)がいつも忍耐を強いられてきたという図式だったのである。
 この両民族の結婚は九世紀にさかのぼる。大モラビア帝国という統一国家のもとで統合されたが、すぐさま分裂を強制された。
 そんな男女が結ばれたのは、第一次世界大戦後の一九一八年。約一〇〇〇年にわたる交際の末の結婚(統合・独立)だったのだ。
 しかし、両者の関係はけっして深まりはしなかった。被害者意識の強い妻スロバキアが、いばりちらす夫チェコに失望し、浮気(ナチス・ドイツに協力)に走り、そのためこの国は一時ドイツに占領されるという悲劇を招いている。
 もともと性格のあわない夫婦の家庭内別居のような冷たい関係。二人の破局は、東欧に吹き荒れた民主化の波とともに訪れた。
 まず、八九年には民主化により、両民族が対等であることを認める無血の「ビロード革命」が起き、九〇年には国名を「チェコならびにスロバキア連邦共和国」とし、各共和国の権限を強める措置がとられた。
 そして、ついに九三年元旦を期して分離・独立が完遂した。
 東西ドイツ南北朝鮮にように国家の分断には多くの犠牲をともなうものだが、この場合はまったく血を流さずにおこなわれた。その意味でこの分断劇は歴史に残る「離婚」といってもよいだろう。

ロム・インターナショナル(1997)「世界地図の楽しい読み方」pp137-138

 チェコとスロバキアは、ともにスラブ系でカトリックが中心で民族的には共通点が多い。チェコは、ドイツの工業地域とエルベ川で結ばれ、ボヘミア地方の炭田をもとに、首都プラハをはじめ、機械工業やガラス、ビールなどの工業が早くから発達した。これに対してスロバキアは、ドルジバパイプラインの通じる首都プラチスラバに石油化学工業が立地したが、他はドナウ川下流地域と同様に農業中心の地域であった。こうした工業化の違いによる経済格差が市場経済への移行の進め方の意見の違いにつながり、国家分裂に至った。

権田雅幸(2005)「権田地理B講義の実況中継(下)」 p280


 たぶん、どちらか一方が正しいというよりは、おおむね権田地理が詳しいが、世界地図の楽しい読み方のほうはコラムとして書かれているということなのだと思う。権田地理のほうは二次試験の論述対策として書かれているから、おさえるべきところを的確におさえているはずだ。いっぽう世界地図の楽しい読み方のほうは、離婚の話という比喩表現を使うことで文章を読みやすくしている。

 たとえ話を使うと、理解の手助けをする反面、理解のズレを生むことがよくある。別の話をひとつの話に当てはめるのだからどこかで例外ができてしまう。これはあとになって「話が違う」となりがちで怖い。論理を組み立てるとき、ひとつのほころびから全てが破綻してしまう危険性は常に考えるべきだと思う。その点でぼくは権田地理の書き方が好みだなと思った。

 うろ覚えなのだけれど、権田地理で、論述のうまい書き方を読んだ。「出題者の設問意図をおしはかること。相対的な位置と絶対的な位置を書くこと。用語を適切に使うこと。経年変化を書くこと」みたいなことだったと覚えている。もっと大事なことも書かれていたような気がする。今度また読み返してみたい。


 ところで、「世界地図の楽しい読み方」の中で特に、知らなかった・面白かったと感じたコラムはこんな感じ。

グリーンランドは、その名のとおり「緑の島」か? p29
・地図ではわからない、全土がジャングルの国 p39
・国境不明地帯の面積が、なんと日本一国分!? p46
・統治する人も、される国民もバラバラの国とは? p58
・スペインとフランスに税金を納める国とは? p72
・「公国」って、いったいどんな国をいうのか? p87
・砂漠の国トルコやイランでも氷点下になる?! p102
・ひと昔前のアラブ世界は、こんなにシンプルだった! p120
・なぜチェコとスロバキアは「離婚」したのか? p136
・マルタが強固に中立を保つわけは? p167
・経度0はロンドンとパリの2か所にある?! p172
・アジアの小国チモールに流血が続くわけ p219
・イスラエルの本当の国境はどこなのか? p224


 「世界地図の楽しい読み方」は全体的にとても読みやすい。比喩が多い印象もあったが、初歩的な知識を入手できる。入門のためには、はじめから深くやるよりも広く浅くやるほうがいいなと思った。また、コラムと論述対策における書き方には、違いというとせいぜい“比喩が許されるかどうか”ぐらいなものがあるのかなと思った。


学校では教えない 世界地図の楽しい読み方 (KAWADE夢文庫)

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権田地理B講義の実況中継―大学入試 (下)

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