読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

知らないことを調べるブログ

映画の分からないところを調べてまとめる場所にしていきます。

かぐや姫の物語の感想→「なにこいつ?悲劇のヒロイン気取りやがって」

 タイトルは煽りです。映画を楽しんだ方すみません。でもそれぐらい主人公のかぐや姫に感情移入できなかった。


 まず、太鼓の効果音が良かった。かぐや姫がでんでん足音を鳴らしながら走るのが気持ち良い。他にも観ていて気持ち良い演出が盛りだくさんだった。特に、かぐや姫と捨丸の野外セックスシーンが圧巻。二人で昇天したあと月夜に照らされたかぐや姫と捨丸の「抱いて!」「今抱きしめてるじゃないか」「もっと強く!」という掛け合いを「あからさまだ・・・」と思いながら観てた。

 物語のテーマは「少女が大人のシステムを受け入れるまで」だと思う。映画のラストで月から来た観音様が人々をあっさりと殺しながら(目を覚ました翁と嫗が空中を駆け上って雲の上に乗り込むシーンがあって、そのあと昏睡した人々が起き上がるシーンは描かれないのであれは全員を殺していったのだと思う)かぐや姫を月に連れて帰る。記憶を失ったはずのかぐや姫は地球を振り返って涙を流す。これはたぶん、システムに取り込まれて機械のようになってしまったようにみえてもそれは耐えているだけ、みたいな、いま大人側にいる観客やこれから大人になっていく観客への共感ポイントなんだと思う。それは納得できるし共感もする。

 ただ、主人公のかぐや姫が「クルーザーの女」に見えるんだ。これがどうしても引っかかる。


 クルーザーの女って何? という大半の方は以下に貼る引用文を読んでください。読むのがしんどい方は、要するに、「自分は弱った女だと周りにアピールし続けるめんどくさい女」ということを意味します。過去に東京ポッド許可局という音声ポッドキャスト番組で「クルーザー論」として配信されていた話題です。今は聞けないみたいです。

■下にある「クルーザー」という物語を読んでください。この話には、5人の登場人物が出てきます。
読んだ後に、この5人の登場人物について、共感できる順に順位をつけてください。
**************************

          
「クルーザー」

 突然の嵐に見舞われたクルーザー(大型ヨット)が2艇、無人島の流れ着きました。 1艇には若くてきれいな女性とフィアンセの男性、もう1艇にはヨットマンと老人が乗っていました。 日が暮れて嵐は少しおさまってきましたが、フィアンセの男性が高熱にうなされ、意識不明になってしまいました。

 若い女性は、一生懸命看病しましたが、容態は一向によくなりません。 夜はどんどん深まっていきます。彼を助けるためには、医者のいる島まで連れて行くしかありません。 しかし女性はクルーザーの操縦ができませんでした。そこで彼女はヨットマンに助けを求めにいきました。するとヨットマンは「この島から医者のいる島までは2時間はかかる。それに夜の航海はとても危険で、命がけだ」としばらく考えていましたが、「そうですねえ。あなたを今、抱かせてくれたらクルーザーを出しましょう」と言ってきました。

 思いもよらない言葉に困った女性は、老人にどうしたらいいか相談しました。老人は「今のあなたにとって何が良いのか何が悪いのか、私には答えられません。自分の心に聞いて自分で決めるのがいいでしょう」と返事をしました。 彼女は悩み苦しみましたが、彼を助けるためにヨットマンの言う通りにしました。 夜明けにヨットマンの操縦するクルーザーは無事医者のいる島に着きました。

 3日3晩、男性は生死をさまよいましたが、医者の懸命な看護により、やっと目を覚ましました。若い女性はようやくほっとして彼を抱きしめました。彼女は真実を話すかどうかとても迷いましたが、悩んだ末に正直に全てを打ち明けました。しかしそれを聞いたフィアンセは怒り狂い、「何てことするんだ!お前の顔なんかもう見たくない。出て行け!」と彼女を部屋から追い出しました。

 悲しみにくれた女性は、浜辺に座って波を見つめていました。そこに医者がやって来て彼女に声をかけました。 彼女が事情を話すと、「僕には君の気持ちがよくわかるよ。私が彼と話してみようじゃないか。 彼も病気が治ればきっと理解してくれるはずだよ。それまでしばらくの間、私があなたの世話をしてあげよう。」と言いながら、彼女の肩に手をかけました。

参考:星野欣生(2003)『人間関係づくりトレーニング』金子書房
**************************

※これは心理テストの類ではありません。正解もありません。

http://www.voiceblog.jp/tokyo-pod/634022.html


 クルーザーの話をすると、僕はどうしてもこの女性に共感できない。身の上を他人にべらべら話すからです。わざわざ老人に相談に行って、わざわざ悲劇をフィアンセに伝えて、わざわざ浜辺に座って波を見て、医者にもすべての事情を話すわけです。話を聞いて欲しい。私を理解して欲しい。私こんなにひどい目に合ってるんだよ。そういう気分で浜辺でたそがれる。確かにつらい目にあって、出来る限り知恵を尽くして頑張った。だけどさ、それって人にべらべら言い回るものではないよと思う。自分の手柄を自慢しているのと変わらない印象がある。


 かぐや姫の物語のかぐや姫はどうか。一言であらわすと“嫌なやつ”。今の境遇が嫌になって皿を割る。母親と大事に育てていた畑を荒らす。暴言を吐く。爺さんが話をしている途中で退席する。既婚している元カレを誘惑してセックスする。

 どうしても僕は感情移入できなかった。

 かぐや姫に求婚していた有力者のひとりが死に、それを知らされたかぐや姫が嘆くシーンがある。これも嫌だった。かぐや姫は「私のせいで誰もが傷ついていく」と嘆くわけだけど、その嘆き方がなんだか妙にドラマチックでカッコつきの“感動的”な印象だった。どん底ってそんなもの?


 例えば『マイレージ、マイライフ(2009)』という映画がある。主人公のジョージ=クルーニーの職業は解雇宣告人で、各地の企業に赴いてはリストラを告げていく生活を送っている。しかし、リストラされたうちの一人が自殺したことをきっかけにそれが崩壊していく。解雇宣告人の仕事のあり方に疑問を抱いていく。自信にあふれていたかつての姿は過去のものになり、ただの「迷った人」になってしまう。「俺が今まで信じてきていたことは何だったんだ?」誰からも肯定されず見放されていく。でも仕事はある。やめるのか?やめないのか?

 どん底って、誰からも見放されたなか、すべてを自分で判断せざるを得ない状況を指すんじゃないの? かぐや姫は周りからちやほやされ続け、結局最後まで自分で決断をしない。どん底が浅いのだ。


・・・僕の読み取りが足りないのかなー。いずれタマフルで答え合わせをする予定です。


追記:2013/12/05

 マイレージ、マイライフに、ジョージ=クルーニーが恋愛関係にある女性の家を訪ねるシーンがある。たぶん彼はこんなことを言うつもりだった。「君となら上手くやっていける」しかし彼女には家庭があった。ジョージ=クルーニーの前で夫に対し困ったように彼女は言う。「道に迷った人みたいなの」頼りにしていたはしごを外されるシーンだ。

 かぐや姫の物語で、捨丸に対してかぐや姫は言う。「あなたとなら上手くやっていけた」捨丸が既婚だと知らないままかぐや姫はセックスをしてしまう。

 かぐや姫が彼は既婚だと気付くシーンだったら良かった。はしごを外される。自分は周りよりも成長が早いと思っていたが、いつの間にかみんなのほうが先に大人になっている。子供なのは私だけだった。それに気付くシーンだったら。映画の印象は変わっていた。そんな風に思う。