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知らないことを調べるブログ

映画の分からないところを調べてまとめる場所にしていきます。

リアリティ重視が売りなのに事実関係を歪めて描くのは、どうなの「ゼロ・グラビティ」

 最近観た映画。

ウィッチブレイド・シスターズ(1975)
ビッグ・ガン(1973)
リトル・ランナー(2004)
舟を編む(2013)
エラゴン(2006)
木曜組曲(2002)
イージー・ライダー(1969)
戦場でワルツを(2008)
ゼロ・グラビティ(2013)
悪の法則(2013)
キラー・エリート(2011)


 宇宙での漂流体験を通して主人公の成長を描いたアトラクション映画「ゼロ・グラビティ」について、思うところがあった。いくつかの映画を例に出していく。


 僕は、ジャッキー映画「酔拳2」でジャッキー・チェン酔拳に興奮した。アクションが主人公の成長を描くために使われていたからだ。

 映画中盤、禁じられていた酔拳を主人公のフェイフォンは解禁して闘う。母から酒をもらったフェイフォンは、戸惑いながら「でも父さんに……」と言うのだが、「このままじゃ負けるわ。禁酒の命令なんか気にしていられないわ」という母の言葉を聞いて、母を救うためと、自らの誇りを守るために、彼は嬉しそうに酔拳を使ってしまう。僕は、「やってやれ!!」と思いながら観ている。「そんなタブーぶち壊せ!」と。その負い目があるから、後にしっぺ返しが来たとき、僕はとても悲しい気持ちになっていく。

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 ヒーロー誕生譚の映画「マトリックス」で、敵であるエージェントたちは無関係な一般人の身体を次々に乗り捨てながら主人公を追い詰めていく。子供だった僕は、「もしかしたら僕の知り合いや家族も、何かのきっかけでエージェントに取り替わって襲ってくるかもしれない」と、びびった。同時に、ネオが一般人を巻き込むことへの葛藤を持たないことに気持ち悪さも感じた。つまり、まわりの人間が別人になる恐怖と、革命に伴う犠牲という社会問題に、僕が初めて触れた体験がこの映画だった。だから好きなんだ。

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 おもちゃの大切さがわかる映画「トイ・ストーリー」で、主人公と相棒が空を飛ぶシーンがある。

 相棒のバズは、自分のことを本物のヒーローだと思い込んでいた。ところが、あるきっかけで自身がおもちゃであることを自覚し、同時に空を飛ぶことができないことにも気付く。だからこそ、ロケット花火での飛行シーンが感動的だった。たとえインチキでも彼は空を飛んだのだ。それも、仲違いしていたウッディの助けを借りて!

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 ここであげた3つの映画に共通していたのは積み重ねだ。なにか特別な映像表現があったとき、その場面に至るまでの積み重ねがあるとインパクトが強くなる。積み重ねが無いのなら素人が撮影したyoutubeの衝撃映像と変わらない。


 関連した話で、宇宙総滞在時間の記録保持者であるアナトリー・ソロヴィヨフという人のインタビューがある。その記事から、ゼロ・グラビティにおける登場人物の行動について引用する。

-登場人物についてはどうですか。

 女性宇宙飛行士のありえない行動にびっくりしました。不測の事態が起きているというのに、船長と口論して、ヒステリーを起しているんですから。まるで宇宙飛行士の訓練を受けずに宇宙に行ったみたいです。

宇宙飛行士と会話 | ロシアNOW


 ヒステリーという言葉にはフォローしないが、ゼロ・グラビティに影響を与えた別の映画で、宇宙生物と戦う映画「エイリアン」に僕が乗れなかったポイントもまさにここだった。映画の冒頭で感情移入のレールから脱線してしまうと、重箱の隅が気になっていく。

 ゼロ・グラビティについて、この部分が特に引っかかる。レビューから引用。

ロシアがダメな奴らで中国は役立つ、という図式が最近のハリウッドのゴマスリ感を象徴してますね。

「ゼロ・グラビティ」鑑賞 » KingInK


 さらに調べると、中国による衛星破壊実験で生じた破片がロシアの人工衛星と衝突した事件もある。映画と関係性が反対だ。

 米アナリティクカル・グラフィックス社(AGI)の研究部門CSSIは8日、ロシアの小型衛星ブリッツと、中国の気象衛星「風雲1号C」に由来するスペース・デブリとが衝突したと発表した。

 風雲1号Cは中国が1999年に打ち上げた極軌道(地球を南北に周る)気象衛星で、老朽化によって運用を終了したのち、2007年1月11日に衛星破壊実験の標的として利用された。その結果約3000個もの破片(スペース・デブリ)が軌道にばら撒かれることとなり、くわえて風雲1号Cが周回していた軌道は高度800km辺りと比較的高く、発生したデブリは今後も長期に渡って軌道に留まり続け、他の衛星を脅かし続けることになる。

ロシアの衛星、中国の気象衛星「風雲1号C」由来のデブリと衝突 | その他 | sorae.jp


 かつて、町山さんが「映画をイデオロギーで語るな」と話した。つまり、思想的にどんなにひどい内容であっても、映画の面白さがそれを超えてしまう場合があるので、映画を思想だけで評価してはいけないという意味だったと思う。例えば、ブルース・リーの映画「ドラゴン怒りの鉄拳」で日本はひどい描き方をされる。エイズに関する圧力と戦う男の映画「ダラス・バイヤーズ・クラブ」で日本は妙な描き方をされる。でも、そのために駄作といえるのか? 評論のポイントはそこじゃない、という話だ。

 もし、「ロシアがダメな奴らで中国は役立つという図式であるからゼロ・グラビティは駄作」という主張があったとしたら、その主張は間違っていると思う。無関係だ。


 僕がとても気持ち悪く感じているのは、リアリティ重視が売りなのに事実関係を歪めて描くのは、どうなの? ということだ。積み重ねがなってないとか音楽がうるさいという、映画の面白さに関する問題を抜きにしても。