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知らないことを調べるブログ

映画の分からないところを調べてまとめる場所にしていきます。

初めての民事裁判傍聴

 芸人の阿曽山大噴火さんの裁判傍聴記を読んだことで興味をそそられて、近くの簡易裁判所へ行ってきた。傍聴したのは民事裁判1件。

 準備として、傍聴の手順を予習しておいた。注意したいのはこんなところ。

法廷に入るための扉。一般常識で考えると部屋に入るときはノックをするものですね。しかし法廷は自由に入れるところ。ノックは不要です。 裁判中にノックをしたらうるさくて迷惑ですのでご注意ください。
(中略)
裁判官が入ってきたとき、証人が宣誓するとき(証人は嘘をつかないことを宣誓する)は起立しなければならない。

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 で、裁判所へ。

 裁判所の入口すぐのところに開廷表が貼ってあり、「民事・10:00~・賃金請求・第一回」と書かれてる。刑事がよかったなと思う。でも初公判ならわかるかな。開廷時刻まであと5分。法廷へ向かう。

 傍聴人入口から傍聴席へ。中はこんな感じ。裁判官の座る椅子の左右には「司法委員」と書いてある。傍聴人は僕以外に1人。関係者かなと推測。僕もてきとうに座る。

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 9:58、女性が法廷に入ってくる。1の人に「寒いですね……」なんて話しかけて、司法委員の席に座る。1の人は書記官なのかな。2・3はうつむいたまま。

 10:00、裁判官が奥のドアから登場。「おはようございまーす」とにこやかに着席。全員がてきとうに礼。あれ、いま起立したの司法委員だけだぞ。いいのかなあ。裁判官が開廷を宣言して、3の人に話しかける。

裁判官「被告、○○さんで間違いないですか?」
3の人「えっ、違います」

 えっ! なんだそりゃ、と思っていると、書記官と裁判官が何やら話してる。どうやら、別件の書類を見ていたみたい。そんなことがあるんだな。3の人が被告なのは間違いないみたい。

 裁判官が被告に平謝りして、正しい氏名確認と訴状の読み上げを始める。ところが、早口のため僕にはよく聞こえない。断片的に、「90万円以上に……滞納の……答弁書によると天引きされているが……」と聞き取れた。1分くらい喋ったあと、被告に話しかける。

裁判官「明細は?」
被告「はい」
裁判官「3万とか、3万5千円とか、これですか?」
被告「はい」
裁判官「払うべき時に、立て替えたという事実は?」
被告「え……?」
裁判官「滞納分はなかったということ?」
被告「一緒に市役所に行ったんです」
裁判官「市役所へ行ったのはいつ頃ですか? 今回和解するまでの分は……」

 話の内容がぜんぜん頭に入ってこない。なんの話をしてるんだ? きっと、彼らの中ではすでに内容が整理されていて、書面でやりとりされたものをもとに会話が進んでいるから傍聴人にとってはわかりにくいのかな、と思っていたが、後にそうではなかった事が判明していく。


 裁判官が推測を始める。

裁判官「推測だけど、あなたが納めるべき分、40万円ね、これを会社が立て替えたということになってるんだけど」

 推測じゃなくて訴状の内容だと思うんだけど。文章を口語に直したということかな? ここで被告が反論。

被告「給料から引いてくださいと言ったんです」
裁判官「原本ある?」

 裁判官と書記官で書類のやりとり。そしてようやく、裁判官が2の人に話を振る。あっ、2の人は原告なのか。

原告「何年か前のを滞納してまして。滞納分を支払いたいという相談を受けて、一緒に市役所へ行ったんです。市役所に分納してもいいよ、と言われまして」

 原告の話を裁判官が引き取って、整理してから被告へ質問。

被告「給料から引かれていると思ってるので、立て替えてもらっているとは思ってません」
裁判官「だとすると、3万5千円はどうしたのか、と原告に返ってくるよね」
原告「3万5千は貸金の返済、2万は税金です」
裁判官「22年には、住民税という立て替えはないんだよね」

 なにやら原告が責められている雰囲気。ここまで聞いてわかったのは、被告と原告は労使の関係で、毎月3万5千円というお金を、立て替えたお金だとして原告が被告に返済を求めているけれど、被告はそれを給与からの天引きだと思っているということなのかな。争点が少しわかってきたところで、裁判官の質問は原告へ。立て替えの事実がないという裁判官の指摘について。

原告「22年は、給料が少ないので、天引きはしないでくれと言われたんです」
裁判官「市役所が、本人に請求すると言ったの?」
原告「いや、言ってないですけど……」
裁判官「じゃあ、市役所はそれも言えずにいたということね。それで会社が立て替えたと」

 裁判官の理解が速すぎてついていけないんだよな。再び、原告の話を裁判官が被告に解説。で、原告にひとこと。

裁判官「原告に言いたいんだけど、こういう説明を被告に説明しないと、混乱するよね」
被告「立て替えになってるってことですか?」
裁判官「確認これからしないとね」

 従業員に対する賃金を説明せずに取り扱えば、仮に不当ではないとしてもトラブルは起こるよな。心の中で了承し合ってるつもりの状態って危険だよなあと思う。


 裁判官が一呼吸おいて、次の話題へ。

裁判官「貸し金についてだけど……原告は、被告に月2万円貸していたということだよね?」
原告「はい、ですが、(笑)今、供述書を読んでいるところなんですが、被告は記憶にないと……」
裁判官「借用書はないの?」
原告「……はい。はっきり言うと、記憶にないということになると、裁判ではこういうことになるんだな、と思いました」
裁判官「そうなるよね」

 そうなるよねと思う。ここで、裁判官が笑いながら被告へ。

裁判官「被告さん、証拠見る?(笑) ほんとの訴訟だと、パッパッと交わすんだけど」

 えっ、これはほんとの訴訟じゃないの? どういうことだろう。これに対して不服そうな被告。

被告「でも、90万を立て替えたということは、聞いてないんですけど」
裁判官「それはこれから説明を受けようよ。原告は、貸しつけた記録を被告に見せて、説明してあげてください。ちっこいテーブルでね」
原告「はい」
裁判官「詳しい書類があるなら、次回に追加ということになるけど。こういう書類があるよ、という説明を被告に説明するということで、今回は説明を主にしたいんだけど。隣の部屋のちっこいテーブルでね」

 テーブルの小ささを強調する裁判官。距離を縮めて話し合えということかな。ここで、原告と被告と書記官と司法委員が退廷。えっ、なんだこれは。外に出ていったぞ。隣の部屋で話し合いを始めたということか。さらに裁判官が、傍聴席へ向かってこう話す。

裁判官「原告がいいっていうなら、一緒に行ってもいいけど。相談を受けてるってことで」
隣の傍聴人「聞いてみます」

 もう一人の傍聴人は、原告の相談者だったんだな。法廷には裁判官と僕だけ。どうしようかと思っていると、書記官が入ってきて、裁判官と雑談。

書記官「寒いですよね」
裁判官「暖かく迎える裁判所ではないということになってるよ」

 何いってんだ。電話で空調を止める書記官。雑談はつづく。

裁判官「けっこう時間かかるね」
書記官「そうですね」
裁判官「話をじっくりしたほうが良いと思ってさ。……ちょっとサボってます。後ろ空いてます?」
書記官「空いてます」

 裁判官が奥のドアから外へ出てしまった。ここで、なんと書記官が僕に話しかけてきた。

書記官「あの」
「はい」
書記官「一度休廷になりますので、再開するまで外で、ロビー等で待機していただけますか。お声掛けしますので」
「はい」

 おーっ、これはなんだ。時計を見ると10:30。話しかけられちゃった、と、どきどきしながら法廷の外へ。たぶん、司法委員の立会のもとで、原告が被告に説明を隣の部屋でやっていて、それが思いのほか時間がかかりそうなので休憩ってことなんだろうな。こんなことがあるのか。別に俺は赤の他人だし帰ろうかな、と思っていると、おなじく外へ出た書記官から話しかけられる。

書記官「けっこう時間がかかると……」
「1時間くらいですか?」
書記官「そうですね……話によってはかかるかもしれません。お声掛けしますので……」
「いえ、ただ傍聴で来ただけなので、これで失礼します」
書記官「残っていただいてもかまいませんが」
「いえ、すみません。ありがとうございました」

 で、帰宅。


 裁判官が「ほんとの訴訟だったら」と言っていたのが気になるけど、とにかく初めての裁判傍聴は民事だった。裁判官の「話をじっくりしたほうが良いと思ってさ」というのが印象的。阿曽山大噴火さんのコラムを読んでいると、裁判官は、人を裁くというよりも、再発を防ぐとか今後の課題とかを重要視する傾向があるように思う。今回は、説明不足や不文律な関係がトラブルの原因になっていて、裁判官はそこを改善させたかったのかも。

 30分間の傍聴だったけど、その限りでは特に法廷内が寒いとは感じなかったな。(だじゃれです)